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東京高等裁判所 昭和28年(ム)2号 判決 1953年9月28日

再審原告 上告人 尾沢義之助

再審被告 被上告人 株式会社八十二銀行

主文

本件再審の訴を却下する。

再審費用は再審原告の負担とする。

理由

本件再審申立の理由は別紙記載のとおりである。

論旨一について。

所論は、さきに再審原告が上告理由としてかかげた見解をくりかえすにすぎないものであり、本件上告が第二審の終局判決に対してなされたものである以上、当裁判所が右理由について判断しなかつたのは当然のことであつて、当裁判所のなした上告棄却の判決にはなんら判断の遺脱はないから、論旨は理由がない。

同二について。

記録によると、本件上告は当初本件について管轄権のない最高裁判所に提起され、同裁判所書記は第二審裁判所の書記から訴訟記録の送付を受けるや、その旨を昭和二十八年三月二十日上告人に通知し、上告人は同年四月十四日に同月十一日附上告理由書を同裁判所に提出し、その後同裁判所は同年五月十三日附をもつて本件を当裁判所に移送する旨決定し、該決定は同月十四日上告人、被上告人に決定正本を送達することによりて告知された。そしてその後最高裁判所書記から訴訟記録の送付を受けるや、当裁判所書記は同年五月二十六日その旨を上告人に通知し、上告人から当裁判所に提出したものが所論の昭和二十八年六月三日附上告理由書であることが明らかである。惟うに右最高裁判所の移送決定は該決定が前記のように上告人、被上告人に告知されると共に確定するものと解するを相当とするから、本件上告は民事訴訟法第三十四条第一項の適用により当初から当裁判所に係属したものとみなされ、前記最高裁判所書記のなした記録受領の通知もその効力を維持せられるものと解するを相当とするから、前記当裁判所書記のなした記録受領の通知はしないでもよいことをしたものというべく、従つて民事訴訟法第三百九十八条所定の上告理由書提出の期間である三十日は右最高裁判所書記のなした記録受領の通知の日である昭和二十八年三月二十日から起算すべきものと解するを相当とする。そうすると、所論の昭和二十八年六月三日附上告理由書は右期間経過後に提出されたものというべきであるから、当裁判所が同理由書記載の上告理由について判断しなかつたのは当然のことであつて、当裁判所のなした上告棄却の判決にはなんらの判断の遺脱はないから、本論旨も理由がない。なお所論の昭和二十八年六月三日附上告理由書記載の上告理由は同年四月十一日附上告理由書記載の上告理由と全く同一趣旨であるから、後者についてなした当裁判所の判断は実質において前者に対する判断ともなるのであり、この点からいつても所論の如き判断遺脱はない。

叙上のように本件再審申立の理由はいずれもその理由がないから、本件再審の訴を却下することとし、再審費用の負担について民事訴訟法第九十五条、第八十九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長判事 柳川昌勝 判事 村松俊夫 判事 中村匡三)

再審申立の理由

一、第一審長野簡易裁判所の言渡した判決は不当の判決である。被告の提出した乙第四号証は既に事件発生後の昭和二十四年迄の間に払戻を受けた預金元帳である。その元帳を被告は口頭弁論終結後証拠として提出したものを同裁判所は採用して判決したのである。このことは上告人の応じ難きものである。

二、東京高等裁判所の言渡した判決によると、上告人の提出にかかる昭和二十八年六月三日附の上告理由書は上告理由書提出期間経過後の提出にかかるものであるから、同理由書記載の上告理由については判断できないとあるも、これは昭和二十八年六月二日長野郵便局書留郵便二五二号をもつて提出したものにして、判決記載の遅滞事実なし。

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